離島へ移住すると幸福度は上がるの?年収600万達成後、お金より時間を選んだ男に聞いてみた

一生懸命働いても、生きているだけでお金が飛んでいく
自分の人生ってなんなんだろう?

働く男性なら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
お金をモチベーションに働いても、年収600万円を超えると年収増加に幸福度が比例しないという話もあります。
では、幸せな人生に必要なものは、一体何なのでしょうか。
STANDでは、昨年(2018年)3月に、30歳まで年収を600万円にすることを目標にがむしゃらに働いてきたものの、 達成後、自分にとっての幸せを見つめ直し、離島への移住を決意した斉藤さん(34歳・男性・仮名)に年収600万を達成して見えたもの、移住を決めた理由についてインタビューをさせていただきました。
今よりも幸せな生活を求めて、地方に移住するという生き方も珍しくないこの時代。
斉藤さんの幸福度は、移住によって上がったのでしょうか?
今回は、離島での移住生活を始めて1年と数ヶ月の月日が流れた斉藤さんに、現在の生活移住後の幸福度についてお伺いしました。
※前回のインタビュー記事をご存知ない方は、始めに幸せな人生にお金はどこまで必要?年収600万を達成後、島への移住を決めた男に聞いてみたの記事をお読みいただくことをおすすめします。

自由な時間は増えたの?フルリモートで働く現在の暮らし


ー“お金よりも時間を選んで移住を決めた”という斉藤さんでしたが、自由な時間は増えましたか?
「実は、都内にいた時と同じ会社で社員を続けているんです。
なので、そこそこ忙しいですね…(笑)。」
ー…え?
「移住をする際、当時勤めていた都内のITベンチャーの社長に、離島に移住をするため退職する旨を伝えたのですが、
“どうせならそういうメンバーも応援できるようにしたい。制度を整えるので、フルリモートで働きながら移住すればいい”
と言われ…。」
ーさすが、都内のITベンチャー!
「ただ、フルリモートになると以前と全く同じ労働時間・給与というのも難しく…現在は時短正社員という形で、月●時間労働という契約で働いています。労働時間や場所が変わったとはいえ、業務内容に大きな変化はなく、以前と同様マネージメント業務も続けています。
おかげ様で、テレビなど様々なメディアで取材していただく機会ができました。」
ー時短社員ということは、自由な時間が増えたのではないですか?
「多少は増えましたが、やはりベンチャーなので…(笑)。
さらに、副業で都内のコンサル案件や広告運用の仕事を受けたりもしています。
やはり、今までのスキルを活かそうとすると、東京からの仕事が主になりますね。」
ーなるほど…。
また、移住してからお子さんが生まれたとのことなので、そういった意味で、プライベートも忙しそうですね。

「そうですね。
以前は仕事さえ終わってしまえば自由に飲みに行ったり遊びに行ったりできていたのですが、ちょうど移住してすぐのタイミングで子供が生まれたので、そうもいかなくなりました。
基本的に自宅で仕事をしているのですが、夜まで仕事をしたら仕事帰りの妻が保育園から娘を連れて帰ってくれるので、3人で食事をして、娘をお風呂に入れて…というルーティーンです。」
ーしっかりパパ業をされていますね…!
「はは(笑)。
ただ、育児に関しては、移住してもしてなくても変わらず必要な時間だと思うので、これに関しては全然苦ではないですね。」

収入は下がったのに、意外と生活コストがかかる?移住後のお金事情

島のイベントに参加する、奥様と娘さん

ー移住後も、変わらず忙しそうですが、年収や、生活コストの変化はあったのでしょうか。
「個人の仕事の収入は波がありますし、会社の方は時短正社員になったので年収は下がりました。
また、妻も勤務先が首都圏のチェーン店から島の個人経営のお店になり、勤務形態も育児のため正社員からパート勤務に変わったので、世帯年収でいえばかなり下がっています。」
ーとはいえ、島での暮らしは生活コストも下がったのではないですか?
「意外とそうでもないですよ(笑)。
現在新築のメゾネットタイプのアパートを借りているのですが、島内で新築物件は少ないのと、移住者が増えて空き家が足りなくなってきているので、そんなに安くはないです。
移住前と比べると、部屋数が増えて、家賃がやや下がったくらいですかね。」
ー食費などは安いのでは?
「うーん…島内で一番栄えている地域に住んでいるので、田舎でよくある“お隣さんが野菜をたくさんくれて…”なんてことは、そんなに多くはありません。
ただ、スーパーの野菜はやや安い気がしますし、魚なども安いですよ!
あと島だからか、光熱費がすごく高いんですよね。これは移住前より上がりました。」
ー光熱費が高いのは盲点でした…!
車なども購入されたのでしょうか?

「はい。
都内勤務の時は電車移動が基本でしたし、定期もあったので“休日の移動に交通費がかかる”という概念がありませんでした。
しかし、島では車移動が基本なので、車本体はもちろん、保険などの維持費やガソリン代など…以前はなかった出費が増えましたね。」

忙しくて、年収が下がって、生活コストも安くない…幸福度は上がったの?

ー失礼ですが、割と忙しそうで、年収が下がった割に生活コストはそこまで下がっていない…とのことですが、移住してから幸福度は上がりましたか?
「私の場合、圧倒的に上がりました。
理由は3つあって。
1つ目は時間の使い方です。
そもそも移住の目的が“限られた人生の時間を、どう自由に使えるか”だったのですが、移住後、忙しい日々は変わらないものの、フレキシブルに予定を組めるようになりました。」
ー“月に●時間労働する”という働き方になったため、労働する時間を選べるようになったということですね。
「はい。
例えば、天気が良かったら趣味のSUPに出かけ、仕事は夜に回す…なんてこともできてしまいます。
その時その時自分がやりたいことを優先できることはとても楽しいですし、自分の生活を自分でコントロールしている感があって、幸福度がとても上がりました。」

移住してから始めたというSUP

ー“その時やりたいことを優先して生きていくー”人間としてとても大切なことのような気がしますが、仕事をしながらこれができる人ってなかなか少ないですもんね…。
「また、通勤時間がなくなり家族のために使える時間が増えたのが、一番幸せです。
現在私は、基本的に夜19:00まで仕事をしていますが、19時からすぐに家族と過ごせますからね。」
ー通勤に片道1時間かかっていたとしたら、往復で1日2時間、家族と過ごせる時間が減るんですね…。
「そうなんです。
だから、小さいお子さんがいて通勤に時間がかかる人は、17:00には会社を出るべきだと思います(笑)。
小さな子供って、大体遅くても21:00には寝るじゃないですか。
19時まで仕事をして20時に家について…だと、平日子供といられる時間が全然ないと思うんです。」
ーそれよりも帰宅が遅くなってしまう方も多いと思うので、下手したら平日全く子供に会えないなんてお父さんも少なくなさそうですね。
「1日2時間子供との時間があれば、平日5日で10時間一緒にいられる訳ですから、この時間があるかないかってとても大きな差だと思います。
仕事って、“今後の人生であと何千時間…何万時間働くんだろう?”ってくらい、果てしないものじゃないですか。
でも、子供の小さい時って本当に限られているし、大人にとっての10年と子供にとっての10年は全然価値が違うと思うんです。
子どもにとって大事な10年。なのに、大人の都合を優先して一緒に過ごす時間が取れないのは悲しいことじゃないかなと。そう考えると、移住して良かったなと思いますね。」
ー移住せずとも、“働き方を変える”“フリーランスになる”などの工夫もできそうですが、なんにせよ、働きながら子供との時間も確保できるというのは素晴らしいことですね。
「2つ目は、環境が良いということです。
コンクリートジャングルと呼ばれるような都会の環境で人間が暮らすようになったのって、ここ数十年とか、せいぜい100年以内のこと。歴史を遡っても、本来人間に適した環境じゃないと思うんです。
島に来て、そういった環境的なストレスが一切なくなりましたし、仕事で難しい問題にぶつかった時は、海に散歩に出かけてアイディアが降りてくるのを待ったりもします。」

気分転換に散歩をするという海は、全てのストレスが吹っ飛ぶほどの透明度

「都内にいるメンバーは、やはりどうしても日々の業務や都会という環境に追われていて、余裕を持って物事を考えられなくなっていたりするので…。
私は、生活にかかるストレスが減った分、仕事で生じる問題やストレスにきちんと向き合うことができるようになりました。」
ー生きていく上で、ストレスを必要最低限に留められるのは、素晴らしいことですね…!
3つ目の理由はなんでしょうか?

良い人が多いということです。
正直、最初は島民の皆さんに馴染めるかどうか、多少の不安はありました。
しかし、島内でも一番栄えている地域に引っ越したので、移住者の方も多いですし、他人に過度に干渉するような文化は今のところ感じないですね。」

住んでいる地域で行われたという、お祭り

ー島ならではの人付き合いなどはないのでしょうか?
「全くない訳ではなく、妻の職場の人たちとみんなで飲みに行ったりもするし、フェスに行ったりもするし、夏はBBQをしようなんて話をしたりもするし…ちょうど良いですね。
家族ぐるみで付き合える仲間が増えたし、妻も楽しそうに暮らしているので、私も嬉しいです。」

移住して幸福度が上がるかどうかは、その環境への向き・不向きでしかない

海だけでなく、マングローブも魅力的だ

・自分の生活を自分でコントロールできるようになった
・家族との時間が増えた
・環境的なストレスが減った

など、移住を機に幸福度が上がった斉藤さんですが、今の生活に不満を感じている人へのアドバイスはありますか?
「生活の不満がなにかにもよりますし、正直移住をしなくても改善できることも多いと思います。なので、自分が何が不満で、解決策として何がベストなのか、きちんと向き合って考えてみることが大事なのではないでしょうか。
ただ、リモートワークという意味でアドバイスをするのであれば、これは完全に向き不向きがあるなと。」
ー斉藤さんの場合、リモートワークが向いていたと…?
「私はもともと、ひとりで何かをやることが苦じゃないんです。
ひとりっこなのでひとりで遊ぶことに慣れているということもありますし、1社目も2社目も、特殊な部署にいたので“社内で誰かに聞いても誰も分からない。自分で調べて自分で進めていく”という仕事スタイルでした。」
ーほとんどの会社員は“誰かに意見を聞きながら進めていく…”という働き方ですよね。
「なので、そういったスタイルを好む人は、正直1人でバリバリ仕事を進めていくリモートワークとか、フリーランスは向いていないと思うんですよね。
そういった環境を経験したことがない人でも、そういう性質を持っている人なら大丈夫だとは思いますが…。」
ーそういう性質を持っているかどうか…というのはどのように判断できると思いますか?
「例えば、会社員だけど“1人で進められる業務の方が楽・好き”“そういう働き方に興味がある”という人は良いと思いますよ。男性脳が強い人と言いますか。
反対に、周りの人とコミュニケーションとったり、共感を得ながら働きたい…どちらかと言うと女性脳が強い人は、直接顔を合わせながら、集団の中で働く方が幸福度が高いと思います。」
ー実際の移住者はどういった方が多いのでしょうか?
「移住後、島に残り続けるのは

・“お店がやりたい”“農業がやりたい”など、島でやりたいことがあって、それに挑戦している人
・サーフィンやダイビングなど、人生で最優先することと島の環境が合っている人
・島の環境を気に入り、フリーランスとして自分のスキルを活かしながら仕事をする人(その働き方が合っている人)

ですかね。」

マリンアクティビティはし放題だ

ー娯楽的な意味で、不自由はしていませんか?
趣味のダーツが全くできなくなってしまったのですが、意外とストレスは感じていません。
東京に10年以上いて、半分何もかもに飽きたな…というところで移住しているので。
それよりも、今までと全然違う環境で、SUPを始めてみたり、ダイビングに興味を持ってみたり、新しい趣味に出会えているので、そちらのワクワクもあります。
人生における退屈から解き放たれた感があるので、それが一番楽しいです。」
ー今後は、しばらく島での生活を続ける予定ですか?
「せっかく島で生まれたのだから、子供は島の子として育てたいなと思っていて。妻も島暮らしを気に入っていますし。
仕事に関しては、会社がいつまでもある保証はないし、子供が落ち着いたら自分のお店をやりたい気持ちもあって。
妻のスキルを活かしたお店を開いて、私がWebマーケを担当するとか(笑)。
ビジネスというよりは、“島で何していこうか”という感覚で、働いたりお金を稼ぐことをしていけたらなぁと。
島だと土地代とか家賃などは都会より安いので、新しいチャレンジは始めやすいんです。
収入は落ちたけど生活に困るレベルではないし、これから人生がどうなっていくのかとても楽しみですね。」

自分の向き・不向き、理想を知り、“お金”ではなく“幸せな暮らし”を実現するために働こう

移住をすることで、斉藤さんの幸福度はとても上がっていました。
その理由は、斉藤さんにとって新しい働き方・島という環境が合っていたから。
今の生活に不満を感じている方、年収が上がっていくことに幸福を見出せなくなっている方は、その原因が何か、自分の向き・不向きをしっかりと考え、ベストな暮らしや働き方を実現しましょう。

・自分の生活を自分でコントロールしたいのであれば、まずは働き方を変えてみる
・環境が飽きたのであれば、ワクワクする場所を探しに出かけてみる
・なんとなく他の暮らしをしてみたいけど、移住という決断に踏み切れないという方は、土日だけ通える地域を創ってみる

など、できることはたくさんあります。
また、斉藤さんがリモートワークで社員を続けるよう提案されたのは、会社の柔軟性があったのはもちろん、会社にとってそれだけ斉藤さんの市場価値が高かったから
今すぐにリモートワークや独立、移住が難しい方は、「ただ年収を上げるため」に働くのではなく、「自由に生きるためのスキルを身につけるため」に仕事をすれば、モチベーションも上がるかもしれません。