勃起の持続力・瞬発力は思考と感情に左右される。森林原人氏に聞く、「勃起論」

遅くなる勃起の初速。早めに訪れるスタミナ切れ。
歳を重ねるにつれ、衰えていく勃起力。これは世の男性にとって、大きな問題でしょう。
何と言っても、勃起力の衰えから来る様々な問題ーーセックスレス、夫婦ゲンカ。できれば出会ったあの頃の関係を…そして、中2の頃の勃起力を取り戻したい。
では、この勃起力問題。勃起をすることが仕事の一部になっている「AV男優」はどのようにして立ち向かい、克服しているのか。
そこで今回、有名AV男優の森林原人氏に「勃起への向き合い方」から「勃起を持続するための思考法」など、「真のオトコの勃起論」をお聞きしてきました。
これを読み終わったころ、あなたはきっと勃起について誰かに話したくなることでしょう。


森林原人/1979年生
筑波大学附属駒場中学校・高等学校出身。
中学校受験時ラサール・麻布・栄光に合格しており、偏差値78のただの秀才だった。
しかし、中・高と全く勉強しなかったため高校卒業後は1年浪人し、専修大学文学部心理学科に進学。大学でなかなか自分の居場所を見つけられず、以前から興味があった汁男優に応募。そこで素人とは思えない射精のコントロールなどを発揮し、周囲から求められる存在に。その後AV男優一筋の人生を歩み始め、経験人数は9000人を超えている。
正しいセックスの仕方、性感性症の予防などの啓蒙活動も行っており、著書に『偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論』(講談社文庫/2016年)などがある。

前提として、「勃起と男らしさは必ずしも一致するものでもない」


− そもそもですが、やはり勃起力は年齢を重ねるにつれて弱くなっていくものなのでしょうか?
「勃起には重要な要素が2つあります。それは『勃起状態になるまでの反射速度』と、『勃起してからの維持』。どちらも年齢とともに衰えます。これにより、男性は自身の男らしさに危機感を持ち、女性は自身の性的魅力がなくなったんじゃないかと悩んでしまうんです」

− つまり、お互いが自信を失ってしまう。ということですね。
「これらは、勃起を男らしさの象徴や、対象への性的興奮のバロメーターと思い込んでいることが前提にあります。これが不幸のはじまりなんです」

− 不幸の始まり…ですか。
「そうなんです。勃起と男らしさは必ずしも一致するものでもないのに、それをセットで考えていると、勃起力の弱まりが男らしさの喪失になります。すると、そこと向き合いたくないとセックスから逃げたり、逆にセックスに執着したりと極端な行動に出てしまうんです」

− 極端な行動というのは?
「逃げる場合は、パートナーからの誘いを避けたり拒否するようになります。執着する場合は、勃起薬に依存したり、自身の能力を試すためのセックスを求めるようになり、大抵が不特定の相手との対戦を求めるので、特定のパートナーとのセックスは減ります。女性は自身の性的魅力への不安から、自身の存在価値を疑いだし、パートナーからの愛情不足を感じるようになります。つまり、愚痴やぶつかることが増えてしまうんです」

− 今までその事象を分解したことなかったのですが、よくよく考えると確かにそうなるなぁと思います。
「男女ともに理解しておいて欲しいのは、勃起も、相手への性的興奮も、愛情と一致するものではないということです。つまり、勃起が愛情のバロメーターではないのです。相手との関係性を考えるうえで、愛情を求めることと勃起を求めることは別問題。そこを理解しておかないと、セックスレスや自身への自信喪失、自己肯定感の損傷を引き起こし、不必要なすれ違いを生み出します。」

− 勃起の衰えで自身を責めたり、相手を責めたりするのは無意味だということですね。
その通りです。むしろ弱っている時に支え合うことで、絆を深めた方がいい。そのためには、勃起に意味や価値を見出さないことです。その上で、勃起のコントロール法を説明していきます!」

勃起を左右しているのは感覚ではなく、思考や感情。である


「AV男優にとって、勃起のコントロールは必須の能力です。コントロールにも2種類あり、早くイッちゃいそうなのを我慢する力と、興奮を維持し続ける力が求められます。どちらもポイントは『集中力』にあります。セックスの最中に萎えてしまう中折れの多くは、集中力が途切れることによって引き起こされています。もちろん肉体的感度も重要ですが、比重としては、脳や心による方が大きいです]

− 身体的な問題よりも、脳や心による問題が大きいんですか!!
「例えば、目隠しをして誰だかわからない相手に責められて勃起したけど、目隠しを外したら好みのタイプでなく萎えてしまうなんていうのは、そういった経験がない方からしても想像つくことでしょう。つまり、勃起を左右しているのは感覚ではなく、思考や感情だということです」

− 確かに、めちゃくちゃ想像がつきました。
「そこがわかってくると、萎えないようにするコツは自然とわかってきます。ポイントは➀頭の中で興奮し続けること。➁相手に対して好意を持ち続けること、です」

興奮し続けるためには「視野を狭める」

「まずどうやって興奮をし続けるかですが、視野を狭めて集中力を高めます。人間は意識して視野を狭めることができる生き物です。つまり、ある一点だけを見つめて、その周りのものを見ないようにする。その一点が、顔だったり、おっぱいだったり、女性器だったり、はたまたコスチュームだったりします。もしくは、目をつぶり完全に視界を閉ざし、頭の中で想像上の何かを見るということをすることもできます」

− 自分が性的に興奮するポイントを見つけ、そこに集中する。合理的ですね…!
ただし、ここまでいくと相手の体を使ったオナニーになっていくので、精神的な繋がりは生まれませんし、頭の中と体の動きが乖離しているのでものすごく疲れます」

− 確かに。
「1番自然に勃起し続けるには感情を高め、相手のことを好きになっていくことです。僕たちAV男優の間では『瞬間恋愛』という言い方をしますが、セックスしている間だけでも、相手のことを本気で愛おしく思うのです」

− 瞬間恋愛を実現するためにはどうすればいいのでしょうか?
「これを実現するコツは、相手の悪い部分を探さず、良いところだけを見るようにし、なおかつ言葉に出して『好きだよ』と言うこと。言葉に出すことによって、言霊となり、感情が加速的に高まっていきます。『気持ちいい』とかもそうですが、自分の中に起きた感情を言葉に出すというのが重要です。慣れるまでは白々しい言葉しか発せられないかもしれませんが、言い続けていると言葉に感情が乗ってくるようになります」

− 最初はぎこちなくても、言葉にして発することで重みが出ていく…。つまり、心が先ではなく、まず口に出して暗示をかけ、感情を乗せることが大事なのか!それはやったことがなかったです。

オトコたち、「発射をしなければセックスが終わらない」という固定概念を捨てよ


– では、仮に集中が解けてしまい、セックスの最中に勃起が萎えてしまった場合はどうすればいいのでしょうか?
まず、何よりも重要なのは、『焦らないこと』です。勃起には集中力が重要だと先ほど説明しましたが、焦ると集中力が散漫になり途切れます。勃起しなきゃと自分にプレッシャーをかけたり、勃起できるかなと不安に思うと、意識がそちらの方に行ってしまい性的興奮が置き去りになります。心構えとしては、『萎えちゃったら萎えちゃったで仕方ない、潔くちょっと休ませて』という位開き直っていることです」

– 追い込むのではなく、開きなおること。精神的には非常に大事なことですよね
「皆さんはAV男優と違い『発射をしなければセックスが終わらない』なんていう制限がありませんから、ダメだったら次回に持ち込せばいいのです。この気楽さが、勃起にいい感じに影響を及ぼします。それでもどうしても萎えてしまった時は、いちど呼吸を整えてください。精神的な理由で萎えたのか、肉体的疲労で萎えたのかの2つが考えられますが、どちらの場合も呼吸が浅くなっているはずです。深呼吸をし、肉体的にも精神的にも落ち着いてください」

– 「発射をしなければセックスが終わらない」という固定概念を捨てると…!
「そして相手とくっつき、自然と『またしたいな』という欲望が湧いてくるのを待ちましょう。もし湧いて来なければ止めてしまえばいいのです。セックスを挿入や射精で完結させるのではなく、『裸で抱き合ったり、撫で合うだけでも充分』だということをお互いが認識できていると、気まずい雰囲気にならずにいられます」

勃起力を高めるために、「1回1回のセックスを忘れる」


– セックスの最中にやったほうがいいことは理解できました!では、日常的にできる、勃起力自分持続メソッドはありますか?
「そうですね。エロいことばかりを考えている僕ですが、日々新鮮な気持ちでいるために、過去にあったエロいことや、気持ちよかった思い出を忘れるようにしています。先ほどは、セックスを射精や挿入で完結させようとしないことが重要だと言いましたが、もう一つ重要なのが、1回1回のセックスを忘れるということです。悪かった思い出も良かった記憶もなくしていきましょう」

– セックスを忘れる…?男は基本的に「忘れたくない生き物」かなと思うんですが…!
「悪かった思い出を引きずると、トラウマとなり、勃起できないんじゃないか、セックスがうまくできないんじゃないかという自己暗示にかかります。良かった記憶を引きずった場合も、そこと比較してしまい、自分の能力の衰えや、相手への評価など、本来気を配る必要のないところに気が行くようになってしまうんです。だからこそ、悪いことも良いことも忘れて、毎回初めてのセックスだと思って臨むのです。そうすると、ある程度の新鮮さが保たれ、思考がすっきりとした状態でいられます」

– 人間というのは慣れてくるとルーティンになりがちですからね…!肉体的に心がけたほうがいいことはありますか?
「肉体的なコツは、やはり運動と食事です。まずスクワットや、腹筋背筋など自重でできる運動を日々心がけて下さい。特にスクワットは、海綿体に血を送るポンプの役割をする括約筋周りが鍛えられますので有効です。腹筋は、へそから下の下腹部を鍛えることでやはり海綿体への血の巡りが良くなります。腹筋背筋など体幹を鍛えることで、疲れにくい体になりますし、体温を高めにしておくことができるようになります」

– スクワットは大きな筋肉を動かすから、消費カロリーも高くダイエットにいい筋トレと聞きましたが…!まさか、勃起力にもいいとは!!
「食事に関しては、まず体を冷やさないということが重要で、食べ物でも味噌汁等の発酵品を必ず取り入れ、野菜を食べる時は冷たいサラダではなく温野菜を食べるようにしてください。また、脂っこいものは血を重くしますので控えてください。とは言え、あれを食べちゃいけないこれを食べなきゃいけないと考えすぎるとストレスになり、それはそれで勃起の妨げになりますので、ほどよく心がけてくれれば大丈夫です!」

– やはり、努力は欠かせないんですね
「ちなみに僕は、1日1食生活にし、消化に使うエネルギーを減らすようにしています。これは各自の体質にもよるのですが、空腹の時の方が勃起しやすい傾向にある人が多いですよ。さらにその上で、サプリメントの摂取も続けています。『ケール100%の青汁と、エビオス錠、アルギニン、タクラマカン砂漠人参』が僕の必須セットです。各自の好みもありますので、いろいろ試してみて自分のお気に入りを見つけられるのが1番いいと思います!」
– めちゃくちゃ勉強になりました…!!本日はありがとうございました!