こんにちは。浜松一郎です。
突然ですが、皆さんはコンドームがどうやって作られているかご存知ですか?避妊具として最も身近なものであるコンドームですが、その製造過程を知っているという男性は少ないのではないでしょうか。
小さな穴があいていたら、「大変なこと」になりかねないコンドーム。そのものづくりの裏側はどのようになっているのか…。
「これは、オトコたるもの工場見学に行くしかないようだ…な!!」
そう思い立った私は、日本国内で圧倒的なシェアを誇り、ゴムじゃないコンドーム「サガミオリジナル」を作る、「相模ゴム工業(以下、相模ゴムさん)」さんの本社工場に潜入することを決意したのでありました。
というわけで今回は、相模ゴムさん全面協力のもと、コンドームがどのように作られているのか、実際の現場の様子を交えてご紹介していきたいと思います!
▼コンドームづくりの工程
- ゴムの木の樹液と薬品を混ぜる
- コンドームの形づくり
- コンドームの安全性を徹底的にチェック
- コンドームを独自技術で包装
- またもや再チェック。一個でも品質基準を満たさなければ15万個廃棄
心の底から日本のものづくりの凄さに度肝を抜かれました…!見学後には、「Mr.コンドーム」も登場します!
「ザックリと相模ゴムさんの歴史をご紹介!
工場見学の前に、相模ゴムさんの歴史をザックリとご紹介します。
相模ゴムさんは日本で最初(1934年)にラテックス製コンドームの製造を開始。そして、1998年に次世代素材「ポリウレタン」を使用した日本初のコンドーム「サガミオリジナル」を発売しました。
コンドームを筆頭にヘルスケア事業やプラスチック事業、介護事業も手がけており、リーディングカンパニーとして業界を牽引している会社です。
「工業見学ユニフォームに着替えていざ、出陣!
では、いよいよ読者の方が気になって仕方がないであろう工場見学に繰り出します。施設内に立つこの木は、スタッフの方がコンドームの形を模して切っているとのこと。
ちなみに、相模ゴムさんは現在、サガミオリジナルを筆頭にコンドームの生産量の9割以上をマレーシアに移しているため、今回は特別にラテックス製のコンドームの製造ラインを動かして見せていただきました!
まず最初に入ったこの施設は、ラテックス製コンドームの原材料であるゴムの木の樹液と薬品を混ぜる場所です。
コンドームに強度や伸縮性を与え、原料を均一化させるために、数種類の薬品を配合するそう。
混ざったコンドームの原料は、一定温度に保たれた貯蔵庫で一定期間熟成されます。期間は大体2週間ほど。とはいえ、「ナマモノ」であるため、一番いい状態を見計らって取り出されるそうです。
「まるで日本酒のようだなぁ…」と小声でつぶやいてしまいました。
コンドームの形を作る!
そうして、取り出されたコンドームの原料は形づくりに入ります。かたどったガラスの棒にコンドームの原料をつけて成形。
ここでガラスの棒を取り出すのが遅ければ遅いほど、液状の原材料が下にたれるため「うすく」なるそう。逆に、早く取り出すと厚くなるのだとか。
形を作った後、熱を与え乾燥させます。これらの工程は2回行います。
2回行う理由は、1回だけだと細かい空気の穴などが残ってしまう場合があり、不十分だからだそうです。
「串かつは2度付け禁止だけど、コンドームは2度付けアリなんだな…!」と小声でつぶやいてしまいました。
「ピンホール検査」で、出来上がったコンドームの安全性をチェック!
そしていよいよ、コンドームの安全チェックに入ります。まずはピンホール検査から。こちらは昭和17年から続く伝統的な検査方法だといいます。
どのような検査かというと、写真のように金属で出来た棒にコンドームを被せます。実はこの「かぶせる作業」は人力で行われています。数人のスタッフさんがコンドームを鉄の棒に被せる光景は圧巻。そしてめっちゃ早いです。
というわけで、私もチャレンジさせてもらうことに。
※右側の奥にいるのが私です。
手前のスタッフの方の速さと言ったら、目でおうのが大変なくらい。しかも、両手で同時にやっている!凄い!これは職人技すぎる!
一方、私のぎこちなさと言ったら悲しいほどです。
「思い返せば、つけるの下手だなぁ…」 と小声でつぶやいてしまいました。
金属の棒につけられたコンドームは下に流れていきます。
そこで待ち受けるのは、電気が通った水です。
コンドームを被せた金属は電気を検知する仕様になっています。ラテックス製のコンドームは基本絶縁体であるため、中の金属が電気を感知するとコンドームが「やぶれている」ということになります。
チェックされたコンドームはこの後、私達が袋を開けたときに見る「巻き上げられた形」になるのです。
この巻き上げられる工程は企業秘密なのであしからず…!
コンドーム包装する!
巻き上げられたコンドームは包装へ入ります。一つひとつ手作業で機械の上に置かれ…
この白い容器から、潤滑油や、香りをつけるローションなどが出てコンドームにつけられます。
そして機械で包装され、私達がよく見るコンドームになるのです。
「作られたコンドームから抜き出し検査!品質基準を満たさなければ「15万個」は全て廃棄
このように、作られたコンドームは最後に抜き取り検査というふるいにかけられます。コンドームは非常にセンシティブなモノであるゆえ、その安全性を計るためのきちんとした国際基準があります。
まず、最初は破裂試験から。写真のように、出来上がったコンドームに空気を注入します。国際基準では「18リットル」以上の空気が入れば合格。
しかし、相模ゴムさんのコンドームでは平均40リットル以上の数値が叩き出されます。
ご覧の通りパンパンに膨らんだコンドーム。
「これなら、どんなに大きくても大丈夫だな…」と小声でつぶやいてしまいました。
※始まりの一部ですが、ご覧ください。このまま2分弱続きます…!!
空気チェックと並行して行われているのが、水漏れ検査です。まず、水風船のようにコンドームに水をいれます。
その後、吸水紙の上でコンドームを転がして破れていないかチェックします。この工程を機械化しない理由としては、様々な試行錯誤の結果「手作業の方が不良品の検出率が高かった」という背景があったといいます。
加えて、最後に目でチェックします。
ここの工程で皆さんがオレンジの制服を着ているのは、コンドームの中に異物が混入している場合すぐわかるようにするためだそうです。
これらのチェックで品質基準を満たさなければ、同一ラインで作られる15万個は全て廃棄されるそう。
とんでもないレベルの品質管理に、驚きを隠せませんでした…。
「微差が大差…このような品質管理をしているからこそ、圧倒的なシェアをとれるんだな…!」と工場に響き渡る程の大声で叫んでしまいました。
サガミオリジナルが生まれた研究開発室にいって「Mr.コンドーム」に会った!
そして、最後にサガミオリジナルなどのプロダクトが生まれた「コンドームの革命の出発点」である、研究開発室に入ることが出来ました。
内装は企業秘密が詰まった場所なので、お見せすることは出来ませんが一言で言うなら「想像どおりの研究所」でした。
ここで待っていてくれたのがサガミオリジナル001などを世に送り出し、Mr.コンドームの異名で業界内に響き渡る「山中千秋さん」です。相模ゴムさんで出すプロダクトはこの研究室で考案され、世に出されているそう。この研究室に所属している人数は山中さんを含む3人!しかも同時に30件以上の案件を持って動いているといいます。
一郎:「すごすぎる…ちなみに、サガミオリジナル001を作るのにはかなり時間がかかったんですか?」
山中さん:「かかりましたね。特に001は剥離、いわゆるガラス管から剥がす工程が非常に難しいんです」
一郎:「やはり、薄くなることによってどんどん難しくなっているんですね…!」
山中さん:「98年からサガミオリジナルを発売し、それから徐々に薄くしてきているんですね。その中で、002から001に変わるときに大きな山があったんです。サガミオリジナルはマレーシアに生産拠点があります。その中で、ご覧になったように、人の手で作る工程もあり、それに紐づく人の教育や機械の精度など両方必要なのでそれなりの時間もかかっています。やはり『安全第一』でやってきているので」
一郎:「ものづくりへの意識が本当に凄い会社ですね…!!!」
せっかくなのでということで、サガミオリジナル002や001の素材である「ポリウレタン」のコンドーム作りを見せていただけることに。
こちらが、ご紹介した製造工程と同じように作られたポリウレタンのコンドームです。一見、ただのガラス管のように見えますが、ここにコンドームが被せられています。
よくみてもわからないので、山中さんにガラス管からとってもらいます…。(この作業が、山中さんが難しいと言っていた剥離です)
かなーり薄いので、水をつけて慎重に取っていくとなんとなく見えてきました…!!!
この薄さが伝わりますでしょうか。これが001の薄さだそう…!
「確かに薄くなれば薄くなるほど、剥離は難しいんだな…!!」と、小声でつぶやいてしまいました。
相模ゴムさんはコンドーム以外でも活躍している!?
コンドームの製造工程、理解いただけましたでしょうか。私達の手元に届いている相模ゴムさんのコンドームは、とても厳しい審査をくぐり抜けたもののみだったのです。
機械による検査や、人の手や目の検査など沢山の工程を踏んで出荷する。凄まじい企業努力の上に成り立っている相模ゴムさんのコンドームは、本当に凄い製品だったのです。
「厳しい生存環境を生き抜く、野生の動物たちのようにコンドームも沢山の試練をくぐり抜けているのだ…」そうつぶやこうとした瞬間、このような本が置かれました。
「Act of Love…?!」
こちらは、相模ゴムさんが出版した動物たちの求愛行動をまとめた図鑑だそう。求愛行動について専門的に集めた編纂の仕方は世界的に類を見ず、またその編纂の仕方も写真家や専門家だけでなく、NHKや英BBCからも素材提供を頂くなど、多角的な編纂をした本格的な図鑑となっているといいます。
プロジェクト発足から4年、そして2年の制作期間を経てwebデジタル版と冊子版を出版された「Act of Love」。動物の求愛行動が写真と日本語・英文で紹介されています。この本、本当にオモシロイです。
このようなクリエイティブな取り組みを相模ゴムさんは得意としており、2009年には、カンヌ国際広告祭フィルム部門で、日本では13年ぶりとなる金賞を受賞したサガミオリジナル002のグローバルキャンペーン「LOVE DISTANCE」という映像作品も発表しています。
「LOVE DISTANCE動画」
キャンペーン内容詳細
「愛」を伝えていくために、このような活動をしていると相模ゴムさんはいいます。一見、相模ゴムさんがやっているとは感じさせない取り組みであり、これこそ「本当に価値のある活動」なのではないか…そう思いました。
ご覧頂いたように、国際基準を大幅に上回る安全性の高いコンドームづくりから、クリエイティブな活動と幅広く「ものづくり」のアツい熱量を持っている企業はそう多くはありません。
工場見学や開発者さん、そして今回ご同行していただいた社員の方々との関わりを通して、私は一生涯、相模ゴムさんの製品を使うと心に誓ったのでした。
ちなみに…
相模ゴムさんの本社工場の前にあるこちらの「コンドーム自販機」は、日本で一番売上のあるコンドーム自販機だそうです。
なんとなく、作りたてで「新鮮」な感じがするから…でしょうか。