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体の相性が合わないことは「ない」。池本千有さんに聞く、本質的なセックスコミュニケーション・前編

「体の相性がなんか合わないなぁ」「体の相性、なんか合うかも」
こんな言葉を聞いたことある男性、または言ったことのある男性、結構多いのではないでしょうか。
とはいえ、実際に「体の相性とはなにか?」と聞かれると言葉に詰まってしまう方もまた、多いことでしょう。
では一体、体の相性とはなんなのかでしょうか。“何が”合わなくて、“何が”合うのでしょうか?
そんな疑問を日本アマナ性共育協会代表理事/助産師の池本千有さんにぶつけてみました!


池本千有/日本アマナ性共育協会代表理事/助産師
1997年助産師となり、2003年助産院「のあのあ」開業。
2012年3児の母としての子育てエピソード、15年に及ぶセックスレス解消体験を踏まえ、性教育講演会を開始、今までにない具体的で分かりやすい内容が多くの女性に支持される。
2015年、大人の女性のための実践型性共育アマナレッスンを考案、述べ400名以上が受講する人気講座となる。
2017年4月、日本アマナ性共育協会を設立し、実践型性共育を含む真の性共育者の養成に力を注ぐとともに、女性性を開花する生き方そのものがビジネスになるライフスタイルをコンサルティングし、卒業生が全国にて性共育講座を展開している。講座情報は協会HPより。URL:http://jaei.jp/

全男子、必見です。(女子にもこっそり伝えよう!)

▼目次

  1. ペニスのサイズの問題は、工夫次第でなんとでもなる
  2. ポイント:膣は出産に耐えられる程の伸縮能力があるからこそ、サイズで比べることは意味がない。

  3. 挿入後はすぐにピストンをせず2分待つ!
  4. ポイント:物理的なサイズの問題は、このようにちょっとした工夫で解消できる。

  5. 相性は合うものではなく、作り出していくものである
  6. ポイント:女性は、「昨日はここが気持ちよかったのに、今日は気持ちよくないということなんてザラ」

「サイズの問題」は工夫次第でなんとでもなる


− 早速ですが、「体の相性が合わない」とは、女性にとってどういうことなのでしょうか?
池本さん:「体の相性というと、一番に思い浮かぶのはどうしてもペニスと膣のサイズ感のこと、というイメージだと思います。仮に、女性目線から考えると、お相手のペニスの大小や長短が相性を大きく左右すると思いがちです。実はそこが最重要事項ではなく、他に大きく相性を左右する要因というのはあるのです」
− 大きく相性を左右する要因…ですか?でも確かにサイズ感についてはとても気になります。
池本さん:「では、サイズ感の物理的な問題はあるので、まずはそこから解説しますね。日本人男性のペニスの長さは平均13センチ前後だと言われています。AVによる誤った巨根神話により、大きければいい、長ければいいと思いがちですが、大きすぎると挿入時に膣口が痛かったり、長すぎて内臓が刺激され苦痛だと感じる経験をしたことがある女性は多いのです」
− それはよく聞きます!
池本さん:「『程々が一番』とは言うものの、どんなサイズが程々なのかは、女性側の膣の形状により大きく異なるのです。男性にペニスのサイズ感が色々あるように、女性の膣にもいろんな特徴があります。入り口の大きさ、膣の形状や角度や長さなど、とても個性的なのですが、見えない所なので、女性自身でも膣にどんな特徴があるのか分かっていない方がほとんどなんです」
− 男は外に出てるからすぐわかるけど、女性はそうはいきませんよね。
池本さん:「日本人女性の膣の平均的な長さは、『8センチ前後』だと言われていて、実際にそのぐらいの奥行きの方が多いと感じます。しかし、中には5センチにも満たない浅いもの、20センチに及ぶ深いものと千差万別です。物理的な相性があるとすれば、浅い膣に長いペニスだった場合、性交時の内臓をえぐられるような痛みを訴えるケースはよくあります」
− 痛いこともあるようですからね…!

池本さん:「また、深い膣で奥の方のポルチオ性感が発達している方に、短いペニスだと物足りないというケースもあります。しかし、どちらもちょっとした工夫で乗り越えられるものなのです
− ちょっとした工夫、ですか?
池本さん:「膣は出産に耐えられる程の伸縮能力があります。浅い膣でもゆっくりと時間をかけて刺激していけば、一回のセックス中でも奥行きは3センチ程度は伸びたりしますし、長期的に刺激していけば奥の柔軟性が高まって奥行きが定着してきます。逆に、刺激しなければ萎縮して短くなるという現象も起きます
− 出産に耐えられる伸縮性能があるからこそ、形状もある程度フレキシブルだと。
池本さん:「自分のペニスが長いと自覚しているのならば、もしくは女性が自分の膣の長さが短いと知っていれば、ゆっくり挿入し膣の奥行きを確かめながら、徐々に刺激しあい、互いのサイズ感をあわせることができるのです。仮に、奥のほうが気持ちいいのに、ペニスの長さが足りないという場合には、最も深く挿入できる体位を研究したり、クリトリス刺激が効果的に得られる体位と角度を研究したりしましょう」
– 物理的に足らない部分は知恵や努力で補う。これが大切なんですね。
池本さん:「また、少し時間はかかりますが、膣の性感帯を広げていくことにより解消することもできます。奥の気持ちの良いポイントの少し手前を刺激していくことによって、徐々に気持ちよさを膣の前面に移していくことは可能なんです。バイブなど使い、奥から手前へ刺激の場所を移していくと、膣が学習し気持ちいい範囲が広がってきます。色んな所が気持ちいい膣を作れば、どんなペニスでも楽しめるのですから、時間がかかっても挑戦してみる価値はあるかもしれません

挿入後はすぐにピストンをせず2分待つ!


池本さん:「また、ペニスの太さの問題もあります。セックスの度に、膣は入り口三分の一の粘膜部分が膨張して、どんなペニスのサイズにも合わせることが可能なので大丈夫です。ただし、前戯不足により膣粘膜に十分な血流が起こっていない場合は、粘膜が膨張しきれません」
− 粘膜が膨張しきれないということはどういうことですか?
池本さん:「つまり、挿入したとたんピストン運動をせわしなくしてしまうと、膣がペニスのサイズ感を図りきれないためフィットしないままということになってしまうんです。挿入後は2分前後のアイドリングタイムを設けて、膣がピタッと寄り添う感覚が伝わってくるまで動かない時間を確保することが重要となります」
− アイドリングタイム。これはバイクや車でも重要ですからね…!
池本さん:「太くて痛いという場合は、単なる前戯による血流調整不足により膣が柔軟になる前に挿入してしまっていることが多いです。また、入り口の処女膜(これは膜ではなく、膣の入り口を囲んでいる筋なのですが)がもともと強く張っていたり厚みがある膣の場合、そこをマッサージして緩めていけば痛みの解消はできますし、筋のある方向に圧をかけないなどの工夫をすれば回避できます」
− これってつまり、ペニスのサイズとか、膣の深さなどに相性は関係ない。ということですか?
池本さん:「そうなんです。物理的なサイズの問題は、このようにちょっとした工夫で解消できるので、最重要問題ではないのです。ここで気づいていただきたいのが、これだけ膣とペニスが一体化する為のコミュニケーションを、皆さんがセックスの中で重要視して行っているかという点です」

相性は合うものではなく、作り出していくものである


− ということは…!
池本さん:「そうです。冒頭で述べた、相性の最重要事項というのは、『コミュニケーション』なんです。自分の体の特徴をどれだけ知っているかという自分とのコミュニケーション、そして相手の体への興味を持って、互いの体について知っていく、相手とのコミュニケーション。この2つがなければ、そもそも相性がいい=気持ちいいセックスが成立することはないのです」
− 自分と相手とのコミュニケーション。これは深いですね。
池本さん:「例えば、AVやテクニック本の図解で、こうすれば気持ちいいと書いてあったとしても、眼の前の相手の膣も自分のペニスも図解通りではありません。特に女性器は、月経周期により子宮の位置も上がったり下がったり、その形状を日々変化させている複雑ないきものです
− そうなんですか!
池本さん:「昨日はここが気持ちよかったのに、今日は気持ちよくないということなんてザラなんです。毎回毎回が宝探しだと思って、丁寧に女性の反応を見てあの手この手で研究していけば、互いに満足度の高いセックスが続き、相性のいい相手で有り続けることができます」
− てっきり気持ち良いと言っていたところを覚えればいいものだと思っていました。
池本さん:「また、女性側も受け身でばかりではなく、攻めを楽しむことも重要です。攻守交代しながらお互いに与えることを楽しむならば、セックスが彩り豊かになり、予測不可能な流れになるからこそ、楽しさを見出すことができます。お決まりの流れになってしまっては、いくら肉体的に満足しても退屈な行為になり、相性が合わなくなったと感じてしまうものです」
− お決まりの流れにしがちですよね。どうしても。
池本さん:「そもそもですが、セックスの相性は1回ではわかりません。初めての相手にはお互いに手探りで、心理的な距離が近づいていないうちは、すべてをさらけ出し官能をむさぼるような行為にはなり難いものです。よほど痛いことや嫌な行為を強要されたなどを除き、相性を一度で決めつけることはとてもナンセンスなんですよ」
− なるほど。確かに、一回で決めつけがちなんですよね。
池本さん:「それよりも、セックス中や終了後にコミュニケーションできるかどうかが大事。『お互いを気持ちよくさせよう』、『大切にしよう』、『気持ちよくするために工夫していこう』といった会話や思いを持てているかが大事なポイントです。大切なのは、『相性は合うものではなく、作り出していくもの』。そう考えられたら、生涯飽きないセックスを続けていくことのできる、最高のパートナーとなれるでしょう」
− 相性は合うものではなく、作り出していくもの…。これは本質だ…!!
と、前編はここまで!後編では、今回から更に一歩進み、「体の相性を計る行為として女性が一番に大事にしているものはなんなのか…?」などなど、より深く体の相性について迫っていきたいと思います!
後編はこちら:体の相性は“ベッドに入る前”で決まる。池本千有さんに聞く、セックスの質を上げる方法・後編