ハブ、うなぎ、すっぽん。皆さんは食材としてどのようなイメージを持っているでしょうか?
ハブ酒、蒲焼き、コラーゲン!一般的なイメージで挙げるとこういったところだと思います。そして、これらの食材は下半身に効く精力剤としても知られています。しかし、それは本当なのでしょうか?
そこで今回は、この生物たちが食べられるようになった歴史を紐解き、それぞれの栄養素を分析して本当に精力剤としての効能があるのかを解明していきます。
ハブ~猛毒の裏に豊富な栄養素あり~
沖縄に根付くハブの食文化
ハブとマングースの話で認知度が高く、沖縄に生息しているハブ。凶暴な性格で、噛まれたら即死するほどの猛毒を持った危険なヘビ。
そんな、普段近寄りがたく、食べ物としてはゲテモノ食扱いされるハブですが、牛肉を食べる文化がなかった江戸時代では貴重なタンパク源の一つだったんです。
現在は、多種類の肉を食べるようになり、ヘビを食べる習慣は少なくなりましたが、沖縄の地元では強壮剤としてハブ酒は長らく親しまれています。
飲まれるようになったのは、ハブの性器は4本あり、とても精力が強いことから、24時間にも渡って交尾が行われるといいます。そんなハブの生態が、精力剤として使われるようになったきっかけとなりました。
作り方としては、ハブのはらわたと臭腺を除去し、完全に血抜きをしたうえで泡盛に漬け込みます。そういった下処理を怠ってしまうと、生臭くて飲みにくくなってしまうので、自家製の場合は注意しましょう。
ハブの栄養素
ハブには、12種類の必須アミノ酸や、カルシウムやリノール酸、リノレン酸など豊富な栄養素が含まれていて、そのどれもが体に吸収されやすい特徴を持っているのです。なので、お酒としてよりも漢方として飲まれる方が多いようです。
うなぎ~縄文時代から愛される健康要素の宝箱~
うなぎの歴史としては、約5000年前の縄文時代に貝塚からうなぎの骨が発見されていることから、古くから日本人に馴染みのある食材だったと言えます。平安時代の頃から、うなぎは滋養強壮に効果があると知られており、貴族たちは白蒸しにして塩味で食べることを好んでいました。
江戸時代には、濃い口醤油での食べ方が大流行し、そこから蒲焼きとしての食べ方が確立されました。関西の薄味、関東の濃い味というお馴染みの料理文化はここから繋がってきているのです。
東西でのうなぎの調理工程
<関東>
背開き(背中から裂く)→串うち→白焼き(そのまま焼く)→白蒸し(せいろで蒸す)→タレを付けて焼く
<関西>
腹開き(お腹から裂く)→串うち→白焼き→タレを付けて焼く
白蒸ししないこの調理法を「地焼き」と言います。
昔も現在も、うなぎを美味しく仕上げるのは困難だとされており、「串うち3年、裂き8年、焼きは一生」と言われ、店を開くには相当の修業が必要なのです。
土用の丑の日
うなぎは、「万葉集」の時代から強壮食品として、夏の盛りである土用の丑の日に食べられてきました。そもそも何故、土用の丑の日にうなぎを食べる習慣がついたかというと、江戸時代には「丑の日にちなんで、“う”から始まるものを食べると夏負けしない」という風習がありました。
それによって“本日丑の日”という張り紙を貼ったうなぎ屋が大繁盛し、他の店もこぞって真似するようになってから「土用の丑の日=うなぎの日」と定着したのです。
しかし、実は本来うなぎは冬が旬のため、夏場は売れ行きが悪く、販売促進に繋がるよう夏にうなぎを食べることを根付かせたと言われています・・・。
うなぎの栄養素
うなぎは、100gの蒲焼きで2日分捕れるビタミンAをはじめ、ビタミンB1、B2、D、E、そしてカルシウムや鉄分、さらには豊富なたんぱく質など、体に必要な栄養素が凝縮しています。
脂質が多いと心配の声もありますが、コレステロールを抑えて血流を良くする不飽和脂質酸のEPAやDHAを多く含んでいます。脂っこいイメージを覆すほどの健康効果があり、体に優しい優秀な食材なのです。
すっぽん~古来より伝わる重宝食材~
日本と中国のすっぽんに対する扱い方
すっぽんは高級食材として扱われているため、気軽に食べられるものではありません。ましてや、食べたことのない人の方が多いのではないでしょうか?
それもそのはず。すっぽんには非常に深い歴史があり、3000年前から食べられていた中国において、その高い栄養価から国を挙げて管理するほどすっぽんは重宝される食材だったのです。
日本では、縄文時代の貝塚から骨が発見されており、うなぎと同じく古来から馴染みのある生物でした。しかし、この頃から食材として扱われていたかは定かではなく、食べられるようになったのは江戸時代中期からと言われています。
現在では高級食材とされていますが、江戸時代では安価で手に入ったとされ、中国とは真逆の扱いをしていました。しかし、すっぽんの生育が遅いことが原因で品薄となり、次第に高級食材になっていったのです。
その生育の遅さから、明治時代にすっぽんの養殖が始まり、一般的に食べられるようになったのは1980年代と、広まったのは割と最近のことなんです。
すっぽんの栄養素
江戸時代には、既に滋養強壮効果が知れ渡っているほど栄養価が高いとされるすっぽん。具体的な内訳としては、ビタミンB1やB2、亜鉛や鉄分などが含まれており、貧血に悩んだり、美肌を気にする女性にはもってこいの食材なのです。
そして、すっぽんの一番の魅力であるコラーゲンですが、甲羅の裏側に2㎝ほどの塊がびっしりと張り付いているのをご存じでしょうか?
しかし、これを全て削ぎ落とすのは困難とされています。したがって、甲羅を入れたすっぽん鍋にすることで、コラーゲンが大量に出汁に含まれた鍋を作ることが可能となるのです。
ただし、人間の体内でコラーゲンを合成するためにはビタミンCを摂取しなければいけません。このビタミンCはすっぽんに含まれていないため、緑黄色野菜を一緒に入れて食べることができる鍋という食べ方が、すっぽんの良さを一番に引き出せる料理と言えるでしょう。
結局、精力剤として効果はあるの?
どの食材も、精力向上効果があるとされて注目を集めてきました。しかし、どれも医学的根拠はありません。
真相としては、古来の人々の「動物の強いところは食することにより、人間の体内に取り込まれる」という“食思想”、つまり“強い思い込み”が結果を生み、現在まで語り継がれてきたということなのです。
日常の食生活改善が一番の近道
結果として、紹介した3つの食材が精力向上に直結するとは言い切れません。
しかし、医学的根拠がない中でも語り継がれてきているということは、プラシーボ効果。すなわち人間の思い込みの強さはどの漢方薬をも凌駕する可能性を秘めているかもしれません。
精力の改善で1番の近道は、日常生活での食生活の改善です。
日頃からきちんとした食を意識して、生活していきましょう!